産経新聞コラム 怖さを克服するために
- takashi maruyama
- 3月29日
- 読了時間: 3分

海の向こうで戦争が始まりました。
砲弾や銃声が鳴り響くなかで暮らす人々の不安と恐怖を思うと、胸が痛みます。私もアメリカ留学中に近所での銃撃事件を体験しました。静まり返った深夜の街に、乾いた発砲音と人の怒号が響き渡ったときのことを、今でも鮮明に覚えています。夜の空気が一瞬で張り詰め、緊張した夜を過ごしたことを忘れることができません。
脳には、記憶をつかさどる「海馬」という場所があります。そのすぐそばには「扁桃体」と呼ばれる構造があり、危険を察知する役割を担っています。身の危険を感じると、この扁桃体から神経伝達物質が放出され、体全体に警告が送られます。不安や恐怖の感情が高まり、心拍数が上がり、いつでも回避行動がとれるよう体が緊急体制を整えます。この仕組みは、哺乳類にとって生き延びるための重要な機能です。暗がりの気配、怪しい物音、かすかな匂い。危険の兆しを感じれば、神経を研ぎ澄まし、防御の態勢に入ります。とりわけ恐怖を伴う体験は、海馬を通して脳に強く刻み込まれるといわれています。
このような恐怖が長く続くと、心の均衡は保ちにくくなります。嫌でもこの恐怖に慣れなければ日々の生活は送れません。怖い、悲しい出来事でも、それが毎日続けば、脳は少しずつ反応を弱め、現実を受け入れる方向へと変わっていきます。悲しいことですが、人にはどのような環境でも、何とか生きていくための「順応」という力が備わっているのです。
そうした状況の中で、人の心を支えるものがあります。あたたかな言葉、周囲の人との助け合い、日常に起きる小さな心温まる出来事。そんな小さな出来事が、恐怖で固くなった心をやわらげ、ひとときの安息をもたらします。人の脳が恐怖を記憶するように、穏やかな経験もまた心に刻まれていくのです。
荒野に咲いた一輪の花に象徴される、小さな癒しが人を守り、困難に立ち向かうための希望につながってくれることを祈ります。そして、恐怖に慣れなければならないような日常が終わり、世界のどこでも、人々が安心して眠れる夜が戻ることを願っています。
ここまでが掲載された内容です。
ここでは加えて病気の怖さを考えてみます。
病気の診断を受けて、ネットで調べてみると未来が暗くなってしまった という方が多くおられます。5年後、10年後の明るい未来予測ができなくなってしまう。脳腫瘍ではそのような経験をされた方も多いでしょう。
誰も遠い先の未来はわかりません。
まさか自分の身に戦争が起こるとは、災害に遭遇してしまうとは、事故に遭ってしまうとは、、。
突然に降りかかった災厄に、人は歯を食いしばって、助け合いながら、より良い明日になることを信じて前に進みます。
病気が理由で1年後には悪くなってしまっているかもしれな自分を想像すると、明るく今日を過ごせなくなってしまう。楽しいことなど何一つ考えられなくなってしまう。
そんな時にこんなアドバイスをします。
心配して過ごした昨日は、何か悪いことは起きましたか?
この1週間は何か悪いことは起きましたか?
もしもそれほど悪いことが起きなかったならば、心配して過ごして損しちゃいましたね。
ならば、きっと明日も大丈夫なはず。
きっと良くなることを信じて、損した昨日の分を明日は少し取り戻しませんか?
明日1年後が来るわけではありません。
誰も先はわからない。
ネットの情報はいつも正しいとは限りません。
ましてや、病気は人それぞれ。
「一般的に」と書かれた情報を鵜呑みにしては損します。
百里の道も一歩から
きっといいことが起こるはず 小さな努力は必ずや報われるはず、と信じて進んでください。
かつてニーチェはこう言いました。
明日に歩を進めるのは、希望ではなく意志であると。
先生、枡野俊明さんは心配事の9割は起こらないとおっしゃってます。
心配の種類にも依りますでしょうか。
三ツ橋偉子