高次脳機能障害には以下の4つの大きな特徴があります。

 1)注意障害

 2)記憶障害

 3)遂行機能障害

 4)社会的行動障害

この4つの障害は重なる部分も多いため、ひとつひとつ症状を分析することは難しいこともあります。

職場で問題になるのは、

・報告、連絡、相談(いわゆる ほう・れん・そう)がうまくできない

・大事な要件をわすれてしまう

・会議で人の話が理解しきれない

・すぐに疲労してしまう

などの症状です。

家庭で問題になるのは、

・物を失くしてしまう

・予定や約束を管理できない

・家族の気持ちを理解できない

・すぐに忘れてしまう

このような症状を家族は気づきます。

1)注意障害

・適切な対象に対して意識を集中すること

・集中した状態を続けること

・注目していることを、必要に応じて移動させていくこと

これらが「注意」のなかに含まれます。

具体的に表すと、

 ・細かいところに気がつかない

 ・ひとつのことに集中できない

 ・落ち着いていられない

 ・複数のことを同時に平行して行えない

 ・見落としが増える

 ・一つのことを始めたら、他のことに気がまわらない

このような症状が注意障害です。

責任病巣

右大脳の前頭葉のなかでも、帯状回前方が注意の予測と準備に関係している可能性があると言われています。

それ以外にも、前頭葉の下1/3(腹側)や両側性の障害でも似た症状を起こします。

これら「注意」には具体的にいくつかの側面があります。

  Alerting (警戒して待機する)
   警戒しながら待機し、起きたできごとに対して機敏に反応できる状態を維持する能力

  Orienting  (一つの特徴を抽出する)       

   複数の感覚的な情報の中から、一つの物を聞き分けたり、一定の空間に集中して意識を向けたりする能力

  Executive control (複数の中から一つを選び出す)

   いくつかの選択肢がある中から、適切に必要な情報の物を選ぶ能力

  Divided attention (意識の分配)

   二つ以上の課題を同時に処理する時に必要な注意を分配する能力

Point ‼

注意障害や意識レベルの低下、失語症があると、障害の診察でおこなわれる指示に従うことが難しくなります。

正しい評価のためには脳機能の検査をしっかりと行う必要があります。

2記憶障害

「記憶」とは、目の前で起きたことや手順、エピソード、知識などを脳の中で処理できるように符号化し、貯蔵し、必要な時に取り出すという一連の脳の活動を表します。

Point ‼

記憶の分類はひとつではありません。

いくつかの違った表現もあります。

・新しいことを覚えられない

 (古いことは覚えています)

・よって、同じことを何度も繰り返して聞いてしまう

・覚えたつもりでも、その覚えたことすら忘れてしまう

「記憶」には時間で分けるといくつかの種類があります。

時間で区切ると「短期記憶」と「長期記憶」の二つに分ける場合と、「即時記憶」「近時記憶」「遠隔記憶」の三つに分けるばあいがあります。

1)エピソード記憶の障害

 特定の場所や時間に起きた個人的な出来事を覚えておくことです。

本人が内容を思い出し、言葉や図などで再現できるような記憶を陳述記憶(declarative memory)と呼びます。

電話番号を調べていっときだけ暗記して覚える、などの短期間の記憶作業などです。

内容をうまく思い返せず、言葉や図では表現できない記憶を手続き記憶(procedural memory)と呼びます。

自転車に一度乗れるようになると、時間が空いても乗り方を忘れない、といった記憶のことです。

 脳の損傷がおこった時期がわかる場合、

それよりも新しい記憶を覚えていられない場合に前向性健忘(anterograde amnesia),

それよりも古い記憶を覚えていられない場合に逆向性健忘(retrograde amnesia)といいます。

2)短期記憶障害

電話番号を覚えるなど、少ない情報をごく短時間に脳にたくわえ、取り出す記憶の障害です。

持続時間は10秒程度で、覚えられる量は数字で7±2個程度と限られています。

3)意味性記憶障害

物や概念などの「知識」の記憶が障害されます。例えば物の呼名や意味、使い方を説明するなど、物にまつわる知識が障害されます。

4)作話

意識はしっかりしていて、嘘をつこうという意図はないにもかかわらず、話す内容が事実とは違った内容を話してしまいます。この現象は逆行性健忘との関わりあります。ある期間の間の記憶があいまいですが、その期間の記憶を覚えていないことをはっきりと自覚できていないことから、事実とは異なる出来事を断片的に答えてしまうという現象が起こります。

過去の記憶はなくなってしまうの?

多くの場合、古い記憶は障害されません。

また、個人の個性に関連する障害は起こりません。

なので、高次機能障害の段階では 人格が変わってしまう ということは通常は起こりません。

ただし、日々の生活や仕事の場では、電話での対応がむずかしくなったり、あたらしい仕事を覚えるのが苦手です。

3 遂行機能障害

・この次はどうなるのかなど、先のことの予測ができない

・段取りを考えられず、行きあたりばったりの行動が多くなる

・手順にしたがった作業ができない

・効率よく作業することができない

遂行機能とは、自分で目標を定め、計画性をもち、必要な手段や方法を選択し、同時進行で起こる様々な事象に対応し、目的に向かって臨機応変に、長期的な視野を持って行動することです。

家庭での生活はほぼ問題はないのに、職場に出ると問題が起きてしまうパターンの多くはこの遂行機能障害による場合が多いです。

意志決定がむずかしくなったり、ギャンブル性が高まったりすることもあります。

4 社会的行動障害

自分を客観的にみる能力が影響を受けることで起きる症状です。

言いかえると、自分の行動が周りに対してどういう影響を与えるか、を感じる力でもあります。

・あとさき考えずに思いついたことをしたり言ったりしてしまう。

・その場の空気が読めない

・いらいらが多く、すぐに怒ってしまう。

・我慢することが苦手で、あれば食べてしまったり、無計画にお金を使ってしまう。

・態度や行動が子供っぽくなり、すぐにだれかのせいにしてしまう。

・意欲や気力がわかず、自分から何かをしようという気分になれない。

意欲がわかない、気力がわかない、いつも疲れているなど疲労や倦怠感のために活動が低くなってしまう。

反対にイライラした気分を制御できず、攻撃的になったり、自暴自棄になったりする場合もあります。

自分の障害を認めることが困難な場合もあれば、他人に依存的な行動をとる場合などいくつかのパターンがあります。

​職場や友人との人間関係に影響を及ぼすことに直結してしまう症状です。

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