脳の場所に応じて生じる代表的な症状を紹介します
言葉をつかさどる優位半球と、言葉には関係ない非優位半球の二つが左右に分かれています。
優位半球、非優位半球のちがいは起きる症状に大きく影響します。
優位半球と非優位半球
脳には左右があり、言葉を考える脳(優位半球)と、それ以外の脳(非優位半球)が存在します。
脳の同じ場所でも、優位半球と非優位半球では脳の機能は全く違います。
優位半球と言葉の障害
優位半球には、言葉をつかさどるネットワークが広い範囲に存在します。
適切な言葉で表現すること、言葉の意味を理解することが大きく影響を受けます。
利き手と優位半球
右利きの人では9割以上で左の脳が優位半球です。
左利きでは右側、左側それぞれ半分の確率、または3:1で左が優位半球ともいわれています。
前頭葉による症状
遂行機能障害
順序を決めて進められない
行動の開始を自分で決められない
物事の優先順位をつけられない
融通が利かない
失語症
言葉が思い出せない
言葉を間違えてしまう
思った通りに話せない
聞いた文章を理解できない
感情障害
ボーとする
集中力がわかない
いらいらする
衝動的に買い物をしてしまう
頭頂葉による症状
失行症
道具をどう使っていいかわからない
やり方の順番を間違える
物の形がわからない
失語症
言葉が思い出せない
言葉を間違えてしまう
読む、書くができない
聞いた文章を理解できない
地誌的記憶障害
自分のいる場所がわからない
道順を覚えられない
空間や場所を覚えられない
失認症
計算ができない
左右を間違えてしまう
うまく読めない
側頭葉による症状
記憶障害
少し前のことが思い出せない
新しいことが記憶できない
昨日何をしたか思い出せない
失認症
人の顔が見分けられない
相手の表情が理解できない
失語症
言葉が思い出せない
言葉を間違えてしまう
読む、書くができない
聞いた文章を理解できない
半側空間無視
目の前の空間の一部を切り捨ててしまう
どちらか半分の空間に注意が届かない
後頭葉による症状
視野欠損
目の前のどちらが半分の空間を切り捨ててしまう
どちらか半分の空間に注意が届かない
病状認識欠如
見えていないことを認めようとしない
高次脳機能に影響するのは、多くの場合には前頭葉の障害です。
左側(優位半球)が影響する場合には 失語 を伴うことが多く、言葉をうまく探せない、聞いた言葉の意味が理解できないなどの、あきらかな障害であることがわかります。
失語症にも症状の程度に強弱があります。
耳から聴いたことの全てを理解できない
文章は読めるものの、読んだ内容が頭のなかに入ってこない
などの症状を呈します。
右側(非優位半球)の場合には、多くは言葉の障害は起きません。
なので症状があきらかではないので、障害と理解されない場合もあります。
以下のような症状がある場合には検査を受けてみることをお薦めします。
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得た情報を処理するために一時的に保持すること(作業記憶といいます)が難しくなる
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流暢に話せなくなる
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無関心(感情、興味、関心が欠如)
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注意散漫
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質問への反応が遅れる
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社会的に不適切な行動など、いちじるしい自制の欠如 など
高次機能障害が脳のどの領域が原因で生じているのかを知るためにはMRIをとる必要があります。
MRIで異常があると、その脳の場所に応じた症状が起こっていないかを調べることができます。
MRIでは、脳に残った傷痕を見つけることができます。
高次脳機能障害と症状が似ている病気として、認知症やMCIの状態では、MRIでの脳の萎縮や海馬(記憶をつかさどる領域)の萎縮をしらべます。
なかには、水頭症や慢性硬膜下血腫、脳腫瘍が原因で症状を生じてしまっている方もいます。
この場合には簡単な手術や投薬で改善する場合もあります。
脳の検査をまずは受けていただく理由です。
疲れやすい
高次脳機能障害のなかで見落とされがちな症状が、「疲れやすい」「集中力が続かない」「やる気がおきない」などのばくぜんとした症状の場合があります。この症状は数値で測ることができません。なので見逃されやすい症状でもあります。
この症状はさまざまな理由で起こる可能性があります。
例えば、甲状腺ホルモンなどのホルモン分泌の異常、抗てんかん剤の影響、肝臓や腎臓の異常、水頭症(脳を循環する脊髄液の循環不良)など、可能性のある原因をひと通り検査した上で、原因が見つからない場合には、高次脳機能障害を考えてみる必要があります。
前頭葉や島回腫瘍のあとの症例に多い印象があります。
日々の生活のなかでもっとも厄介なのが「疲れやすい」という症状です。
まずは、その症状に抗わないで、「疲れやすい」体に合わせたできることを始めましょう。
無理をする必要はありません。
頭を使う作業をすると、「疲れてしまい」思考が進まなくなったり、一回脳を休ませないと次が始まらなかったりする、と表現されることが多いです。そんなときは無理せず一回休みましょう。
多くの場合には、疲れに身をまかせ単調な時間の中で生活されていることことが多いのも事実です。オンとオフを繰り返しながら、少しずつ脳が活動する時間を増やすつもりで進みましょう。