脳の病気で起こりやすい
てんかん けいれん発作について
高次脳機能障害や脳腫瘍の多くは脳の損傷を伴います
高次脳機能障害は脳の損傷により起こります。
すると てんかん の治療を同時に受けられている方もいます。
てんかんの知識をまとめました。
特発性てんかんと症候性てんかん
原因が特定できないものを ''特発性てんかん'' と呼びます。
脳腫瘍や脳挫傷、脳血管障害など原因の特定できるものを ''症候性てんかん'' と呼びます。
全般てんかんと部分てんかん
脳の異常活動が起こる場所に応じて、’’全般てんかん’’ と ''部分てんかん'' の二つ区別されます。
'' 全般てんかん '' とは両側の大脳半球の広い範囲で同時に過剰な興奮が起こるもので、おもに小児から若年期など年齢に関連して発症することが特徴です。
'' 部分てんかん'' は ''局在関連てんかん''とも呼ばれ、局所的な脳の病変が原因で、特定の場所に限局した異常な脳の興奮により起こります。
原因が見つからない特発性と原因のある症候性、全般なのか部分なのか、この4つの組み合わせでてんかんは分類されます。
脳腫瘍、がんの脳転移では '' 症候性の部分てんかん'' と表現されます。
てんかんはなぜ起きるのですか?
大脳の中は神経線維が密に結びあっています。この神経細胞には、「興奮性」の神経細胞と「抑制性」の神経細胞があり、これらの働きのバランスが崩れると過剰に神経細胞の興奮が起きるとされています。
てんかんの原因病巣は、神経細胞が存在している大脳の表面(大脳皮質)にあることが多く、脳の奥の神経線維が主に通っている白質といわれる部位の病変ではあまりてんかんを起こしません。
てんかんの症状とは?
典型的な症状は、突然意識を失って倒れてしまう、泡を吹いてひきつけ(けいれん)をおこしてしまう という症状です。
それ以外にも、明らかなひきつけは起こさず、意識が混濁するだけだったり、行動が止まってしまう、脱力を起こしてガクッと力が抜けるだけのような発作もあります。
特徴的な発作では、2-3分くらいの意識障害をきたし、自動症といって口をもぐもぐさせたり、衣服をいじったりといった目的のない動きを繰り返す「側頭葉てんかん」というものがあります。
側頭葉てんかんの中には、突然に表現しようもない臭いが現れ、数分でピタッとなくなる異臭発作と呼ばれるものもあります。
同じく、突然胃の中がむかむかっとするのですが、数分以内に元に戻るような発作もあります。
てんかんの発生頻度は?
一般的には、てんかんは神経疾患の中で最も頻度が高く、1,000人に5-10人の割合(有病率0.5-1%)でみられ、全国に約100万人の患者さんがいると考えられています。
若年者では3歳以下の発病が最も多く、また高齢者に多いという特徴があります。
小児のてんかんでは、一部思春期ぐらいまでには治る年齢依存性のてんかんもあります。
他方、高齢で発症したてんかんはなかなか自然には治りにくいものが多いとされています。
がん脳転移では治療期間中に約2割の方にてんかん(けいれん)発作が起こります。
脳卒中・脳の外傷の後にてんかんが起きるのは2〜6%といわれています。
てんかん発作の既往のあるがん脳転移には抗てんかん薬を使うことが勧められています。
(推奨グレードC1)
過去にてんかんを起こしたことのない場合には、予防的な抗てんかん薬が有効であるというエビデンスはありません(推奨グレードC2) 。
ただし広い範囲で浮腫があったり、運動に関連する脳に近い場合には、主治医の判断で予防的に抗てんかん薬が投与されることもあります。(なので脳外科医が診ることが望まれます。)
がん脳転移や脳腫瘍とは関係なく、原因の見つからないてんかん発作が起きた場合、5年以内の発作出現の確率は約35%です。二回目の発作の後に1年以内の再発率は73%と言われています
抗てんかん薬による治療について
通常は単剤から治療を開始します。
発作のコントロールが難しい場合には、敢えて作用点の違う薬剤を組み合わせて治療を行うこともあります。
抗てんかん薬は、種類ごとに特徴や副作用が違います。飲み合わせで効果が強まるものから弱まるものまであります。
薬の種類により一日一回の服用のものから毎食後の一日三回の服用が必要なものまであります。その方のライフスタイルも薬の選択の参考にします。
抗てんかん薬による副作用
1.薬疹
もっとも気を付けなければならない副作用は薬疹です。
赤い小さなブツブツがまとまって皮膚に表われたら、まずはいったん服用をやめましょう。
薬をやめると発作が起こるのが心配です。しかし、身体が拒否反応を示している薬を飲み続けるのはもっと危険です。
早めに外来を受診し担当医から指示をもらってください。
2.眠気
抗てんかん剤は神経の活動に作用し、過活動を抑える役割の薬です。
飲み始めはどうしても眠気や浮動感を感じることになります。
このような症状は何日かすると落ち着きます。
どうしても眠気やふらつきが強い場合には、いったん内服を止めて早めに主治医と内服方法について相談してください。
3.精神症状
感情がいらいらする、攻撃的になる、集中力が続かない、やたらと眠い などの症状がみられた場合、抗てんかん薬の副作用の可能性があります。
薬の種類によって、精神症状が出やすいものがわかっています。
症状は飲み始めてから3~6ヶ月あたりに多いとも言われています。
自分ではなかなか気がつきにくい症状ですので、ご家族に聞いてみてください。
合併症がある時の薬剤選択の注意
腎機能障害、肝機能障害を合併した患者さんには、上のような合併症が増える可能性があります。
よって薬の代謝される機序を考えての選択が必要です。
肝代謝(バルプロ酸、フェニトイン、カルバマゼピン、ベンゾジアゼピン系)
肝腎代謝(トピラマート、ラモトリギン)
腎代謝(ガバペンチン、レベチラセタム)
フェニトイン、カルバマゼピンで心伝導系異常の悪化、カルバマゼピン、バルプロ酸で低ナトリウム血症の悪化が起こることがあります。
フェノバルビタール、ゾニサミド、カルバマゼピン、トピラマートで認知機能の低下、バルプロ酸でパーキンソン症状などが報告されています。
女性のてんかんの方、挙児を希望される方へ
女性で思秋期から出産適齢年齢の場合、ライフサイクルとてんかんの原因を考える必要があります。
妊娠・出産の基礎知識や生活面の注意などを早いうちに相談しましょう。
なるべく催奇形性リスクの少ない薬剤を選択し、発作を抑制できる適切な用量調整を行っておくことが必要です。
→ まずは専門医師と相談しましょう。